目的:H14年度の研究により、培養尿細管細胞においては蓚酸の添加によりCOX-2 mRNAの発現が増強するのに対し、ラットの腎においては高蓚酸尿下でCOX-2 mRNAおよび蛋白の発現が減弱するという、相反する結果が得られた。一般的に腎におけるCOX-2の発現はレニン-アンギオテンシン系によって抑制されることが知られている。また、結石形成過程へのアンギオテンシン系の関与を示唆する報告もみられる。そこでH15年度はラット腎における高蓚酸尿下でのCOX-2 downregulationの機序についてレニン-アンギオテンシン系の関与の有無について検討した。 方法:8週齢雄Sprague-Dawleyラットに1%エチレングリコール(EG)を2週間投与することにより高蓚酸尿および結晶沈着を惹起した。アンギオテンシン受容体阻害剤(ARB)としてカンデサルタン2μg/kg/dayを連日強制投与し、腎における結晶沈着(H-E染色)およびCOX-2発現(real time PCR法および免疫染色法)に対する影響を検討した。 結果:1.EG投与により惹起された結晶沈着はARBにより有意に抑制された。2.コントロール群においては、ARB投与によりCOX-2の発現が増加する傾向にあった。3.EG投与群においては、COX-2の発現は抑制される傾向にあったが、ARB投与はCOX-2発現に影響しなかった。 考案:ARB投与によりラット腎におけるCOX-2発現が増加したことから、腎におけるCOX-2はレニン-アンギオテンシン系によって抑制されることが示された。しかしながら、ラット結石モデルにおけるCOX-2 downregulationの機序にアンギオテンシン系は関与しておらず、他の機序によるものと考えられた。
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