COX-2は炎症反応や発癌との関連から注目されている酵素であり、サイトカインや成長因子によって誘導されることが知られている。COX-2は上皮成長因子受容体(EGFR)との関連についても報告されており、多発性嚢胞性腎疾患(PKD)においてもEGFRの嚢胞上皮での過剰発現が認められることから、PKDにおける嚢胞形成とCOX-2に何らかの関与があると推測された。昨年度報告したように、Human COX-2モノクローナル抗体を用いて、常染色体優性遺伝多発性嚢胞腎(ADPKD)患者の腎組織で免疫組織学的手法を用いて染色を行ったところ、正常腎と異なり明らかな発現が認められなかった。 今回Hunan COX-1モノクローナル抗体とMMP-2抗体を用いて同様に正常腎とADPKD患者での発現を免疫組織学的手法を用いて検討した。ADPKDではCOX-1の発現は増強しており、MMP-2の発現は低下していた。COX-1の生理的機能ははっきりしていないが、COX-2低下に伴うPGE2産生低下を補うためであるかもしれない。COX-1の発現増加が腎嚢胞形成と関連があるか否かについては、今後の検討課題である。 COX-2ノックアウトマウスでの腎における小嚢胞多発の報告されていることから、マウスに対するCOX-2阻害薬経口投与による腎嚢胞発現の有無を観察したが、4週間の投与においては明らかな腎の異常は認められなかった。更なる投与方法や投与量の検討が必要と考えられる。
|