産婦人科良性疾患の適応により子宮全摘出術を施行された非妊娠婦人および分娩時の妊婦より同意を得た後に、子宮頚部組織の一部を採取した。TSG-6抗体を用いて、これらの組織の免疫組織学的な検討を行った。その結果、妊娠時および非妊娠時ともに子宮頚部間質組織にTSG-6の局在が認められた。この局在は、特に早産に至った妊婦より得られた組織において染色性の亢進が認められた。以上より、TSG-6は、ヒトの子宮頚部組織に恒常的に発現し、特に妊娠に伴い、その発現が亢進する可能性が示された。さらに、分娩時には、よりその発現が亢進する可能性が示された。 次に、上記の各組織よりtotal RNAを抽出し、RT-PCRを行った。その結果、妊娠時および非妊娠時の子宮頚部組織にTSG-6の発現を認めた。さらにこの発現は、妊娠時の子宮頚部において強く認められることが判明した。以上より、TSG-6は蛋白レベルおよびmRNAレベルの両方において、ヒト子宮頚部組織に発現し、妊娠および分娩時には、その発現が亢進することが証明された。 以上の結果を基に、子宮頚部培養線維芽細胞を用いて再現実験を行った。定法により子宮頚部線維芽細胞の培養を行った。得られた培養細胞を妊娠および分娩時の状態にさせる目的で、妊娠および分娩時に子宮頚部組織に分泌されるサイトカインを、培養細胞上清中に添加して、種々の状態を反映させた。その結果、妊娠および分娩時に分泌されるサイトカインの添加により、TSG-6mRNAの発現は、濃度依存性に亢進することが判明した。以上のことより、TSG-6は、子宮頚部熟化促進作用を有するものと判断された。 しかし、子宮頚部組織におけるTSG-6発現が、子宮頚部熟化に対して促進的に働くか否かの判断のために、ラットにTSG-6膣錠を作成し投与したが、組織における有意な反応は認められなかった。
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