研究概要 |
1.開腹手術により得られた卵巣癌46検体について,p53AIP1の変異の有無をPCR-SSCP法を用いて調べた.その結果2検体のみに変異が認められた.その変異2検体のp53AIP1の塩基配列を調べたところ,変異はいずれもエクソン2のsilent mutationであったp53AIP1の2種類のアイソフォームα,βに共通するcoding regionについては変異を認めなかった.癌細胞においてp53の変異が高率に認められるのとは対照的に,p53の標的遺伝子の変異の報告例は少ない.p53AIP1についても今回検討した46検体のなかでは蛋白レベルでの変異は認められなかったため,卵巣癌の発癌においてp53AIP1はそれ自体の変異ではなくp53の発現異常に付随して機能が阻害されている可能性がある. 2.既存の卵巣癌細胞株において,HTOA株がp53を正常に発現していることおよびSKOV3株がp53を欠失していることが判明した.これらの細胞株に抗癌剤シスプラチンを曝露し,p53とp53AIP1の発現誘導およびシスプラチン感受性を検討した.野生型p53を持つHTOA株ではシスプラチン曝露後にp53およびp53AIP1の発現が誘導された.一方p53を欠失したSKOV3株ではシスプラチンを曝露してもp53AIP1ならびに他のp53標的遺伝子の発現は誘導されなかった.またHTOA株はSKOV3株に比べてシスプラチンに対して高い感受性を示した.卵巣癌におけるシスプラチンの感受性に対して,p53およびp53AIP1の発現誘導が関与している可能性がある.
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