Steroidogenic Acute Regulatory Protein(StAR)は、コレステロールの輸送蛋白であり、ステロイド産生の律速段階を調節する。本研究では、まず、生体・顆粒膜細胞の機能をよく維持したヒト顆粒膜細胞株HGP53を用いて、StAR分解の分子機構と、そのステロイド産生調節への関与を調べた。HGP53に、タンパク分解酵素複合体・プロテアソームの阻害剤(MG132)を投与したところ、細胞内のStARが著明に増加した。このことは、ウェスタンブロット法、および抗StAR抗体を用いた蛍光免疫染色法で確認された。さらに、プロテアソームの阻害により、ステロイド産生の亢進を認めた。このことから、HGP53においては、StARがプロテアソームにより分解されており、このメカニズムがステロイド産生の調節に関与している可能性が示された。また、プロテアソームの阻害によるStARの増加およびステロイド産生の亢進は、ウシ顆粒膜細胞および莢膜細胞においても確認された。このことは、プロテアソームによるStARの分解調節が、種を超えて存在し、さらには異なった種類のステロイド産生細胞においても保存されている普遍的なメカニズムであることを示唆する。多くの蛋白質は、プロテアソームの分解に先立ち、ユビキチンの標識を受けることが知られる。現在のところ、抗StAR抗体・抗ユビキチン抗体を用いた免疫沈降法では、StARのユビキチン化は検出されていない。ユビキチン化を介さない蛋白分解の関与も考慮にいれる必要があると考えられる。
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