研究概要 |
リソホスファチジン酸(LPA)の多彩な生理作用(卵巣癌細胞の増殖更新など)が明らかになりつつある.また、LPAの反応にはG蛋白共有受容体Edg2,4,7等が関与していることが分かりつつある.我々は、卵巣癌の増殖を中心とした作用に対するLPAの正負のコントロール機構について研究してきた.特に、ゴナドトロピン放出因子GnRH作動薬(GnRHa)の卵巣癌細胞に対して、抗腫瘍効果を示すことがLPAの分解機構を活性化するためである可能性も示唆してきた。 本年度の研究で、我々はGnRHaにより卵巣癌細胞内でLPA分解酵素であるPAP2(LPP3)の局在の変化と酵素活性の変動を観察した。 【方法】LPP3の局在は、ウサギを免疫したポリクローナル抗体を用いて免疫組織学的手法によって観察した。LPAの分解活性に関しては、[3H-Oleoyl]LPAからの[3H]oleic acidまたはmono[3H-oleoyl]glycerolへの変換によって検討した。 【結果】LPAの分解反応の98%は脱リン酸化反応(monoglycerol産生),2%が脱アシル化反応(oleic acid遊離)であり、その反応はMg2+、NEM非依存性であった。このことより、この反応はLPP3による反応である可能性が示唆された。その酵素活性および蛋白局在はともに膜分画に存在しGnRHアナログは濃度依存性に形質膜LPA分解活性を亢進した(EC50=30nM)。細胞株を用いた検討では、GnRH刺激によって形質膜におけるLPP3蛋白および酵素活性の増大を認めた。
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