研究概要 |
子宮体癌細胞株(HEC-1A)にA-LAPを遺伝子導入した細胞株HEC-1A-A-LAPを作製した。HEC-1A-A-LAPは親株に比較し、細胞内のA-LAP発現は約5倍に増加しており、また、培養液中のA-LAPも増加していた。アンジオテンシンIIを添加したところ、親株ではアンジオテンシンII(10-8M)でVEGFの分泌が約2.2倍に増加したのに対し,HEC-1A-A-LAPではアンジオテンシンIIによるVEGFの分泌促進は完全に抑制された。また、アンジオテンシンII(10-8M)を添加した親株とHEC-1A-A-LAPの培養液を血管内皮細胞(HUVEC)に添加し、遊走能の変化を検討したところ親株の培養液では遊走能が約2倍に増加したのに対して、HEC-1A-A-LAPの培養液では遊走能に変化を与えなかった。親株の遊走能の促進はVEGFの中和抗体により完全に抑制された。以上の結果から、アンジオテンシンIIは子宮体癌細胞のVEGF分泌を促進し、血管内皮細胞の遊走能を促進した。A-LAP遺伝子導入細胞では、A-LAPがアンジオテンシンIIを分解することにより、アンジオテンシンII添加によるVEGF発現の促進が認められず、血管内皮細胞の遊走能の促進も認めなかった。次に、実験動物を用いて、腫瘍増殖におけるA-LAPの機能を検討する目的でHEC-1Aの親株とHEC-1A-A-LAPをヌードマウスに皮下移植し、腫瘍増殖の変化及び腫瘍組織の病理学的検討を行った。腫瘍増殖能は両群間に有為な差を認めなかった。腫瘍を摘出し、VEGF及び血管内皮細胞のマーカーであるCD31の免疫組織染色を行ったところ、HEC-1A-A-LAPの腫瘍組織ではVEGF、CD31発現はともに親株に比較し著明に減少していた。つまり、HEC-1A-A-LAP細胞はin vivoにおいても腫瘍増殖には影響しなかったが、血管新生が抑制された。
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