研究概要 |
【目的】閉経後は心血管系疾患をはじめとする動脈硬化性疾患が増加するが、それには生活習慣の違いや遺伝的素因の関与が示唆されている。Apolipoprotein E (Apo E)は肝内LDL受容体のリガンドとして機能し、遺伝子型(E2,E3,E4)の違いにより脂質代謝への影響が異なることが知られている。また酸化LDLの一種であるmalondialdenyde-modified LDL (MDA-LDL)は、動脈硬化惹起性LDLとして注目されている。そこで我々は閉経女性における血清MDA-LDLとApo E phenotypeとの関連性について検討し、さらに血管内皮機能との関連も検討した。【方法】同意の得られた自然閉経女性58例(平均年齢54.4±0.5歳)から空腹時採血を行い、血清MDA-LDLをELISA法にて測定するとともに、Apo E phenotypeを等電点電気泳動法により分析した。さらにプレチスモグラフィーを用いて血管内皮機能を評価した。【結果】分析されたApo E表現型をもとにE2/2とE2/3をE2、E3/3をE3、E4/3をE4と3群に分類した。血清MDA-LDL値はE2(85.3±7.9U/L)<E3(118.8±6.8U/L)<E4(143.5±15.6U/L)の順であり、E2とE4との間に有意差を認めた(p<0.05)。プレチスモグラフィーによる血管内皮機能もE2がE4より有意に高値を示した(p<0.05)。【結論】閉経女性の血清MDA-LDLおよび血管内皮機能はApo E phenotypeと関連があることが示された。MDA-LDLや血管内皮機能は動脈硬化進展と深い関係があることから、閉経女性のApo E phenotypeの解析は心血管系疾患発症を予知する上で重要であると考えられた。
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