正常妊娠20例、異常妊娠症例として妊娠中毒症・切迫早産・内分泌疾患合併・胎児仮死・子宮内胎児発育遅延・胎児奇形症例の胎児心拍数、母体心拍数の24-72時間同時持続収録中である。新生児症例についてはビデオ収録を含めて実施中である。解析においては、胎児・新生児心拍数変動は基準心拍数・一過性頻脈・基線細変動・持続性頻脈をパラメータとし、それぞれを10分、1時間、2分毎に、定量的に同定・算出するコンピュータプログラムを作成した。 これらの症例と解析プログラム、さらに我々が以前に開発したANOVA periodogramを利用し、今回、ヒト胎児心拍数変動のultradian rhythm (UR)とcircadian rhythm (CR)の関係を10症例の3日連続胎児心拍数図から解明した。結果は、URは、全症例において周期(mean±SD: 90.4±9.7min ; range: 76.3-106.1min)を認め、この内7例に有意差(p<0.01)を認めた。さらに、これらの結果は母体行動と無関係であった。一方、CRは、母体行動をベッド上無拘束とした8例中、妊娠38週以降の5例の周期(mean±SD: 24.2±0.3hr ; range: 23.3-24.8hr)に有意差(p<0.01)を認めた。母体行動が家庭内無拘束であった2症例(妊娠38週以降)においては、規則的な生活下の症例にのみ周期(24.5hr)に有意差(p<0.01)を認めた。以上より、満期ヒト胎児心拍数変動において、URは母体行動に左右されない約90minのbasic rest-activity cycleの発現機構が完成し、CRの生物時計はまだ機能していない可能性が示唆された。さらに、CRの発現様式がURに影響を及ぼしていないことから、胎児期にはURのCRへの依存性が確立されていない可能性が示唆された。
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