本研究は、出生直前の胎児期と出生直後の新生児期までの母児の心拍数を24-72時間同時に収録し、母体・胎児単独のみならず両者間の関係解明を目的とした。解析するパラメータは、circadian rhythmとして基準心拍数等、ultradian rhythmとして心拍数細変動におけるrest-activity cycleとした。解析方法は、我々が開発したANOVA periodogram等を用いた。対象として、正常満期胎児・正常新生児群をコントロール、異常妊娠は、母体合併症として妊娠中毒症、切迫早産、内分泌疾患合併、胎児異常では胎児仮死、子宮内胎児発育遅延、胎児奇形。データは、妊娠20週以降の胎児心拍数と母体心拍数を24-72時間同時収録し、新生児は心拍数と共に行動パターン(睡眠覚醒、涕泣、授乳)をビデオにより連続記録した。(3)環境要因の影響を解明するために、母体の日常生活パターン・投薬治療の有無・入院期間・分娩様式、新生児の点滴・投薬等の治療の有無によって対象を細分化して解析した。 本研究によって以下の3点を解明した。 (1)胎児・新生児基準心拍数等のcircadian variationは、胎児において妊娠20週以降には認めるが、環境因子による。胎児固有の生物時計によるはcircadian rhythm新生児時期に確立される。 (2)胎児・新生児の心拍数細変動のultradian rhythmとBRACは妊娠36週には確立され、circadian variationの影響を受けず、独自の発現機構による。 (3)Circadian rhythmの発現に影響を与える因子として、周産期の母体の生活様式が示唆された。 本研究の成果は、生物時計の発生の解明と時間生物学に基づいた周産期母児管理の確立に貢献するであろう。
|