本研究では、子宮頸部擦過細胞からヒトパピローマウイルス(HPV)DNAをL1コンセンサスプライマーを用いたPCRにて増幅、その塩基配列を決定し、感染HPV型を網羅的に決定した。この結果に基づき、頸部正常例および頸癌症例における各HPV型の型別感染頻度を解析するとともに発癌リスクの評価を行った(Asat et al. "A large case-control study on cervical cancer risk of HPV infection in Japan by nucieotide sequencing-based genotyping" J.Infect.Dis.印刷中)。異形成例についても同様の解析を行っている。 頸部正常例および頸癌症例からは30種のHPV型を決定、そのうち18種のHPV型の発癌リスク評価を行った。正常例におけるHPV陽性率な約10%であり、型別感染頻度は、52、51、35、53、56、16、33、90、91型の順に高頻度であった。これは、海外における高い16、18型感染頻度とは対照的であった。一方、頸癌症例におけるHPV陽性率は約90%であり、16、33、58、18、52型の順に高頻度であった。これも、16、18聖で頸癌例数のほとんどを占めるとする従来の報告とは異なっていた。発癌リスクについては、71、90、91型がlow-risk型であることを世界で初めて確定した。 本研究では、塩基配列決定により、従来の方法で検出されたHPV型よりもさらに多様なHPV型の感染実態が明らかになった。今後はバリアントも含めた塩基配列の情報と、病型、予後との関連も含めてこの研究をさらに発展させていきたい。
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