C型肝炎ウイルス(HCV)と、G型肝炎ウイルス(HGV)について、母子感染の視点から検討した。 1.妊婦からの抗原検索 現在までC型肝炎ウイルス(HCV)抗体の検索を行った妊婦は5102名(HCV抗体陽性のため他院からの紹介患者を含む)、このうち血中からHCV-RNAが検出された者は、79名であった(1.5%)。G型肝炎ウイルス(HGV)抗原検索は3738名に対して行われており、血中からHGV-RNAが検出された妊婦は24名(0.6%)である。 2.出生児のキャリア化率 HCVの79名のキャリア妊婦からの出生児は80名であった。80名の児のうち血中から持続的にHCV-RNAが検出された者は7名(8.8%)であった。 HGVキャリア妊婦からの出生児で、分娩時から経時的に採血を行っている児15名の内、持続的に血中からHGV-RNAか検出されている児は10名(67%)となっている。 3.児のキャリア化 HCVの持続感染を起こしていた児7名のうち4名は経過観察中に血中からHCV-RNAが検出されなくなる、抗原陰性化(脱キャリア化)が見られた(57.1%)。 これに対しHGV持続感染児では、現在までのところ抗原が陰性化した児はいない。 4.キャリア化児の肝機能異常 さらに児のALT上昇を肝機能の指標として用いると、血中HCV-RNA陽性児は17名中6名が一時的な肝機能の異常を来した(85.7%)が、HGV陽性児では、10名中3名(30.0%)であった。 以上より、母子感染率は、HCVと比較してHGVが有意に高く、キャリア児の肝機能異常は、HCVで有意に高く見られる事がわかった。 HGVが、そのキャリアに与える影響は現在のところ、HCVに比較して少ないように見られるが、肝機能障害に止まらず、今後より一層のデータの蓄積が必要であると考えられる。
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