C型肝炎ウイルス(HCV)とG型肝炎ウイルス(HGV : GBV-C)は同じフラビウイルス科に属するが、その病理病原性は異なると考えられている。これらのフラビウイルスの母子感染率、感染様式、リスク因子、キャリア化児の肝機能、予後について調べ、その差異を明らかにすることを目的とする。 非HIV/IVDU(intravenous drug users)妊婦からの出生児を定期的にフォローアップし、HCVとHGVの母子感染を比較した。 1.キャリア化児の予後 HCVでは10名のキャリア化児中6名(60.0%)が肝機能異常(sALT>110mIU/ml)を呈し、4名(40%)が脱キャリア化したが、1名は一旦陰性化後再びHCV RNA持続陽性となった。以上より、HCVは母が非HIV/IVDUキャリアでは母子感染率は低く、キャリア化児の3分の1は脱キャリア化することが示された。HGVキャリア化児では単独感染で肝機能異常を示すものはなく、脱キャリア化児も見られなかった。 2.母子感染のリスクファクター (1)HCVのゲノタイプと母子感染には明らかな関連は認められなかった。 (2)妊娠期間での妊婦血清中のHCVウイルス量をについては、非感染例には、ウイルス量が低いものが多く見られるが、ほぼ同様のウイルス量で感染例があり、今回の検討では母体血中のウイルス量と母子感染に明らかな関連は見られなかった。これに対してHGVでは母子感染と母体の血中ウイルス量は相関する傾向が見られた。 HCV、HGVにおいて、帝王切開での分娩では母子感染は見られなかった(ここではHCVにおいてもそのほとんどが陣痛発来後の帝王切開である)。しかしながら、厚生労働省の班研究においても帝王切開における母体の死亡率は、経膣分娩におけるそれの8倍であるとされることから、帝王切開の選択は、母子感染予防ではなく産科的適応によるべきであると考える。
|