研究概要 |
頭頸部癌進行例44例に対して大量のシスプラチンの超選択的動注と照射との併用療法を行った。性別は男性33例、女性11例で、年齢25〜73歳(中央値55歳)である。症例の内訳はT2b:1例、T3:14例、T4a:H例、T4b:15例、ステージII:1例、III:4例、IVA:22例、IVB:17例で、そのうち臨床的に手術不能と考えられたのが24例(54.5%)、手術拒否例が20例(45.5%)であった。病理組織は扁平上皮癌37例、腺様嚢胞癌3例、未分化癌4例で、原発部位は鼻副鼻腔19例、下咽頭8例、中咽頭9例、口腔5例、耳下腺1例、上咽頭1例、聴器1例であった。現在までの生存例の観察期間は9ヶ月〜4年2ヶ月(平均20ヶ月)であるが、Kaplan-Meier法による2年の原発巣のprogression free survivalは全体で66.9%で、T4b症例では57.1%、T4b未満では72.8%であった。2年粗生存率(図5)は52.4%であった。切除不能例が多く含まれており、この治療成績は十分評価されべきものと考えている。 cDNAマイクロアレイを用い既知遺伝子約1000種類から、RADPLATを行なった鼻副鼻腔癌患者における正常鼻粘膜組織、異形成上皮、癌組織の遺伝子発現の変異を解析した。異形成上皮では正常組織細胞に比べ4倍以上発現が亢進したものが8種類、抑制されたものが27種類であった。癌組織では亢進が7種類、抑制が25種類であり、うち3種の遺伝子(Humig, diubiquitin, transcription factor ISGF-3)の発現が癌組織において特異的に亢進しており、RT-PCR法を用いてその発現の差異を確認した。これらの遺伝子の頭頸部癌における発現の報告は少なく、今回の結果の意義を検討するとともに、さらに症例を積み重ね検証し考察を進めていく予定である。
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