頭頸部をはじめとする悪性腫瘍の生物学的悪性度は、血管新生の多寡に相関することが知られており、さらに色素上皮分化因子(PEDF)は血管新生抑制作用があることが最近になって明らかとなってきたため、毛細血管の構成細胞である血管内皮細胞と周細胞についてin vitroでその機序についてさらに検討をおこなった。本研究の今年度の主な成果は以下のとおりである。 1.平成15年度日本耳鼻咽喉科学会総会(5月、東京)において、「低酸素状態における毛細血管周細胞のVEGFおよびPEDF産生」の演題名で低酸素状態において周細胞のPEDF産生が抑制されること、一方同条件において血管内皮細胞増殖因子(VEGF)の産生が促進されることにより、血管新生が促進される機序を発表者として口演した。 2.平成15年度鼻科学会(10月、東京)において「血管新生抑制因子PEDFの血管構成細胞への作用」の演題名でPEDFが血管内皮細胞の細胞死(アポトーシス)を誘導すること、およびその機序としてカスパーゼ3を活性化することを発表者として口演した。 3.2003 Annual meeting of the Association for Research in Vision and Opthalmology(5月、フロリダ)にて「Pigment Epithelium Derived Factor (PEDF) in Human Retinal Capillary Pericytes」の演題名にて周細胞がPEDFを多く産生すること、血管内皮細胞の増殖を濃度依存性に調節すること、及びその細胞内シグナル伝達機序としてc-fosの活性化が関与することを、共同発表者として報告した。
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