研究課題
Six遺伝子は器官形成に重要な転写因子をコードするホメオボックス遺伝子の一群であり、Pax-Six-Eya-Dach遺伝子群の構成要素として機能する。今回、我々はSix1のノックアウトマウスを作成し、内耳の形成過程における転写因子Six1によって、直接転写制御を受ける標的遺伝子を検索した。すなわち、Six1遺伝子の全コード領域がsix1cDNAの129/SvJマウスを用い、雄のキメラをC57BL/6と交配して、野生型、ヘテロ接合マウス、ホモ接合マウスを作成した。これらのマウスのうち野生型、ヘテロ接合マウスでは形態学的に異常を呈さなかった,一方、ホモ接合マウスは出生直後に死亡した。また、ホモ接合マウスはE14.5の時点で内耳が全く形成されないことが確認された。本年度はこれらマウスの蝸牛形態を観察し、既知の内耳を構成する遺伝子を確認することによりSix1が下流のドメインに対してどのような影響を与えるかを検討した。野生型、ヘテロ接合マウスは内耳において、機能的にも異常を呈さなかった。ホモ接合マウスは、E9.5の時期には耳胞そのものは存在するものの、野生型の耳胞において背面に発現するDlx5は腹側にまで拡大した。E10.5の時期にはDach1、Dach2発現の亢進がみられ、野生型において、この時期に腹側に表れるOtx1、Otx2、Lfng、Fgf3、Bmp4の発現は抑制された。そして、E12.5の時期に内耳は内リンパ管と三半規管の先端(遠位)部を残して消滅した。このことによりSix1が内耳の構成に対して、Otx1、Otx2、Lfng、Fgf3、Bmp4など、その下流のドメインの調整器として機能するということが考えられた。なお、これらの結果については第13回日本耳科学会総会(戸叶尚史、他:Six1遺伝子による耳胞のパターニングについて)において報告した。
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