研究概要 |
分子生物学の領域では疾患モデル動物としてマウスが広く用いられているが,その聴覚域値の測定に関してはABRを使用することが一般的であった.一方,DPOAEは外有毛細胞の機能を鋭敏に反映する優れた検査方法であるが,マウスの外耳道は狭く,至適周波数が高いためDPOAEの測定は困難であった.我々はMimosa acoustic社のDP-2000が24kHzまでのDPOAEの計測が可能であった点に着目し,樹脂製イアチップ単体(方法A)あるいはその先端にガラス製イアチップを装着(方法B)するという2つの方法を用いて10週齢のC57BL/6Jマウスに対してDPOAEの計測を行った.その結果,両方法ともにDPグラムの再現性が認められノイズレベルよりも高いDPレベルが求められた.両方法の比較においては,方法Aは方法Bより安定した高いDPレベルを呈したが,脳定位固定装置(成茂製作所製)による探触子の操作が必要であった.方法Bは方法Aに比べDPレベルは低く安定性は劣ったものの,用手的に探触子を保持しても計測が可能であった.このことにより,マウスDPOAEの計測は脳定位固定装置やガラスチップを使用することにより市販のDPOAE計測器械でも計測できることが明らかになった.この結果に関しては,第105回日本耳鼻咽喉科学会総会(有泉陽介,戸叶尚史,川島慶之,稲垣桂,喜多村健:マウスにおける耳音響放射測定の簡略化に関する検討)において報告した.
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