アレルギー疾患の局所においては、好酸球を主体とした浸潤細胞が認められ、局所に動員されたこれらの細胞は、メディエーター遊離を通じてアレルギー炎症の病態を形成している。鼻アレルギーにおける炎症細胞浸潤にはケモカインが深く関与しており1)、好酸球の遊走はエオタキシン、RANTESなどに誘導されることが明らかになっている2)。これらケモカインの受容体がCCR3である3)。CCR3は好酸球、好塩基球やTh2細胞に発現しているが、鼻茸由来線維芽細胞でのCCR3の発現の報告はない。今回われわれは、まずアレルギー性鼻炎患者と非アレルギー性鼻炎患者の鼻茸を細切して単離した線維芽細胞に、CCR3の発現を検討した。その結果、鼻茸由来線維芽細胞にもCCR3の発現がみられることが確認された。そこで線維芽細胞自体が、CCR3を介しケモカイン産生を促進し、鼻茸形成などのアレルギー炎症の遷延化の一因となっている可能性を考え、RANTESなどのケモカインによる刺激でのサイトカイン産生の検討を行った。 対象と方法(1)手術時に得られた鼻茸細切片より線維芽細胞を分離し、4継体以上で使用した。(2)RT-PCR、Western blotsによりCCR3発現を観察した。(3)RANTES、IL-8で線維芽細胞を72時間刺激し上清を回収、細胞外に産生放出されたIL-8量、RANTES量をELISA法にて測定した。(4)RANTESで線維芽細胞を刺激し、1週間後にMTTアッセイにて細胞の増殖を観察した。 結果(1)鼻茸由来線維芽細胞にCCR3のmRNAの発現が確認できた。またウェスタンブロットによって、CCR3蛋白発現が41kDのバンドとして認められた。(2)アレルギー症例(9例)ではIL-1β(1μg/μl)存在下において、IL-8:5ng/ml、50ng/mlの刺激によりRANTES産生は有意に亢進したが、非アレルギー症例(9例)ではIL-8の刺激によりRANTES産生には影響を与えなかった。(3)アレルギー症例(7例)ではIL-1β(1μg/μl)存在下において、RANTES 10ng/mlの刺激によりIL-8の産生は有意に亢進したが、非アレルギー症例(5例)ではRANTES 10ng/mlの刺激によりIL-8産生には影響を与えなかった。IL-1β非存在下ではIL-8の産生はおこらない症例も存在した。(4)アレルギー症例(7例)ではRANTES添加により細胞増殖は亢進し、100pg/mlの濃度において有意に細胞増殖が亢進した。しかしながら、非アレルギー症例(5例)ではRANTES添加によっても細胞増殖には有意な影響は認められなかった。
|