研究概要 |
気道上皮細胞からのIL-15産生機構について検討した。IL-15のプロモーター領域にはNF-κB結合モチーフが存在し、Interferon response element(IRE)とともに転写に関与していると報告されている(Azimi N, et al. Proc Natl Acad Sci USA. 1998)。NF-κBの活性化を誘導する受容体として、Toll-like receptor(TLR)が挙げられるが、気道における報告はみられない。そこで、TLRの発現およびTLR下流のシグナル伝達機構に注目した。TLRsの発現について、Northern blot法により、TLR2,3,4,5,6,9の発現を遺伝子レベルで解析したところ、上皮細胞においては、TLR2,3,6の発現はみとめたものの、TLR4,9は発現していなかった。細菌の菌体成分のlipidAをligandとするTLR4、lipoproteinをligandとするTLR2に特に注目し、フローサイトメトリーにより蛋白レベルの発現を解析したところ、TLR2の発現は単球と同程度であったが、TLR4の発現はみられなかった。次に、lipoprotein, lipid A刺激によるIL-15の誘導について、Northern blot法で解析したところlipoprotein刺激でのみIL-15RNAの発現増強を確認した。培養上清中の蛋白濃度も同様の結果であった。TLR2依存性を確認するため、抗TLR2抗体を用いて中和実験をおこなったところ、lipoprotein刺激によるIL-15産生が抑制された。Dual-luciferase assayにより、lipoprotein刺激によるNF-κBの活性化が確認された。NF-κB阻害剤であるcurcuminを添加することにより、定量的RT-PCR法にて、lipoprotein刺激によるIL-15特異的mRNAの発現が有意に抑制された。以上の結果から、気道上皮細胞においては、TLR2が優位に発現しており、NF-κB依存性にIL-15産生を誘導していることが明らかとなった。
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