内リンパの分泌と吸収に関わっている膜輸送体の発現と内リンパのイオン組成に対する各種ホルモンの影響を調べ、体内の液性調節因子とメニエール病をはじめとする内耳病態との関連を考える手がかりを得ることを目的とする。特に以下の点に重点をおいて研究する。 1.エストロゲン過剰、欠乏状態での蝸牛膜電位、組織学的変化。 エストロゲン過剰状態は、マウスにエストロゲンを1-7日投与し、作成する。エストロゲン欠乏状態は、同種のエストロゲン、およびエストロゲンレセプターノックアウトマウスを用意する。さらに内耳を摘出し、血管条、ラセン靱帯、コルチ器、蝸牛軸に分割して組織を採取し、正常対象と形態変化を比較する。 幼齢マウスではエストロゲン、エストロゲンレセプターノックアウトマウスの蝸牛内電位は正常と比較して変化ないことを確認している。老齢変化、組織学的観察は現在進行中である。 2.内リンパ水腫による前庭系の影響 有色モルモットを用いて、手術で内リンパ嚢を閉塞し、メニエール病のモデルとなる内リンパ水腫動物を作成する。モルモットの前庭機能評価のための前庭眼反射(VOR)測定システムはすでに構築しており、正常動物でVOR gain測定可能な段階となった。現在内リンパ水腫動物のVOR gainの変化を経時的に測定中である。今後内リンパ水腫軽減薬剤投与によるVOR gainの変化、組織学的水腫の程度とVOR gainの相関を検討する予定である。
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