研究概要 |
癌細胞は宿主に対し、細胞表面に種々のアポトーシス抑制蛋白を発現し、それらにより生体の免疫学的監視機構から逃れていること(エスケープ機構)が近年明らかにされ、特に肺癌や大腸癌においては一部解明されつつある。しかし、頭頸部領域ではまだ研究がなされていないのが現状である。我々はアポトーシス抑制蛋白であるDcR3,FLIP、FLICE、Survivin、Smac/DIABLOの発現につき検討した。生検や手術にて得られた38検体15〜25mgを細切し、RNAを抽出し、RTにてcDNAを合成した。プローブ、プライマーを作成しreal-time PCRにかけ、その発現をみた。その結果DcR3は全例に発現を認めた。さらに、FLIPで42.1%,FLICEで84.2%、Survivinでは92.1%、Smac/DIABLOでは71.1%の発現を認めた。このことから頭頸部癌においてもこれらのアポトーシス抑制蛋白を介するエスケープ機構が存在することが示唆された。今回の結果では、その中でも特にアポトーシスを来す経路のうちIntrnsic pathwayを経てアポトーシスを誘導することが主経路ではないかと思われた。またDcR3においてはT分類別、組織別、部位別に有意差は認められなかった。FLIP、FLICE、Survivin、Smac/DIABLOに関しては現在検討中である。さらに来年度では症例数を増加させデータを蓄積し、その一方で、頭頸部癌の細胞株を用い組換えレトロウィルスベクターを用いこれらアポトーシス抑制蛋白をコードする遺伝子を導入しFasLを加え、これらの蛋白を発現している癌細胞がアポトーシス抵抗性を宗すか否かにつき検討を行う。
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