研究概要 |
平成14年度の研究の成果.頭頚部扁平上皮癌におけるCGH法による全染色体の変化の解析データの蓄積から,頭頚部領域の発生母地での比較検討を行い、また他領域の様々な扁平上皮癌で増幅の報告されている領域と,我々がすでに食道扁平上皮癌において増幅を認めた領域について,腫瘍組織から作成した間期核標本を用いて染色体レベルの数的異常の検索を進めた.特に他領域の癌に関連するいくつかの遺伝子については、m-RNAレベルでの発現を含め比較検討した.さらに癌抑制遺伝子を含むと思われる染色体欠失領域にも着目し、頭頸部扁平上皮癌由来の細胞株で発現を検討した.たとえば、胃癌や大腸癌などの共通欠失領域である1p36に含まれるRUNX-3はすでに胃癌細胞株や、胃癌臨床検体で高頻度のコピー数の減少、発現の低下が報告されているが、頭頸部扁平上皮癌細胞株や臨床検体においても発現の変化を認めた.現在症例数を重ね検討中である.平成15年度への展望.得られたデータを元に頭頸部腫瘍の術前診断への応用を模索する.本研究で捕らえた染色体遺伝子変化を臨床経過(リンパ節転移,遠隔転移の有無,抗ガン剤耐性,重複癌など)と照らし合わせ,術前評価に有用であるか否かを検討する.たとえば穿刺吸引細胞診の検体を用いて,FISH法による染色の数的異常やRT-PCRでmRNAの過剰発現を検出し、その腫瘍の予後判定に有用な情報が得られないか等を検討する.さらに術中迅速遺伝子診断への応用として、本研究で捕らえた腫瘍に高発現を示す遺伝子をマーカーとして用い、迅速PCRおよびリアルタイム定量的検出を行い、術中に腫瘍の微小転移および浸潤の検出、リンパ節転移の検出などの術中迅速遺伝子診断への応用を検討する。
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