研究概要 |
若年例の正常眼圧緑内障の原因を解明するために、これまでに報告されているEndothelin-1(ET-1),neuron specific enolase(NSE)濃度の測定に加えて、自己免疫ニューロパチーで抗体価の上昇が報告されている抗ガングリオシド抗体を同時測定し、正常眼圧緑内障の病因としての神経免疫学的機序の関与について検討した。まず、正常眼圧緑内障(NTG)27例(平均年齢49.1才、屈折値-4.3±3.2diopter)、原発開放隅角緑内障(POAG)17例(平均年齢45.7才、屈折値-9.0±3.3diopter)に対して、視力検査・視野検査・ET-1,NSE,ガングリオシド抗体の測定を行った。 NTG患者におけるET-1は1.5±0.6pg/ml、NSEは6.7±1.7ng/mlであった。一方、POAG患者におけるET-1は1.6±0.8pg/ml、NSEは6.8±1.7ng/mlであった。抗ガングリオシド抗体は全例において陰性であった。NTG患者とPOAG患者を比較したところ、年齢・視野病期・ET-1・NSE値に有意な差はなかったが、POAG患者がより近視であった(p<0.001)。 ET-1・NSE値と年齢・屈折・眼圧値・視野病期との相関を調べたところ、ET-1値はいずれ有意な相関は示さなかったが、NSE値は、年齢が高いほどNSE値が高くなる傾向があった(r=0.333,P=0.026)。 今後さらに症例を追加することにより、正常眼圧緑内障の病因解明に迫り、新治療法確立のための多くの新知見が得られるものと考える。
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