薬理学的手法を用いた先天停止夜盲不全型の病態モデル作成

2002 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 14770952
• 研究機関: 名古屋大学
• 研究代表者: 近藤 峰生 名古屋大学, 医学部附属病院, 講師 (80303642)
• キーワード: 霊長類 / 網膜電図 / 夜盲 / 遺伝性網膜疾患 / 動物モデル

研究概要

本年度は霊長類の生理学的実験設備を立ち上げ、網膜機能の電気生理学的実験装置を揃え、高精度の測定が可能な実験設備を作り上げることに成功した。実験動物としては黄斑機能がよりヒトに近いアカゲザルを3匹入手した。ketamineとxylazineの持続筋注による麻酔法では全身状態をモニターしながら再現性の高いデータが得られるように繰り返し予備実験を行った。コンタクトレンズ電極はサル用のものを特別に試作した。光刺激装置としてはGanzfeld domeを用いたが、光源にはキセノンフラッシュとLEDの両方を組み合わせ、刺激の強度や周波数を正確にかつ自由に変えられるように工夫した。サルの硝子体内に様々なglutamate analogを注入した状態でERG波形を記録することに成功した。具体的には、(1)視細胞からON型双極細胞への伝達をブロックするAPB、(2)視細胞からOFF型双極細胞への伝達をブロックするPDA、(3)3次ニューロン以降をブロックするNMDLA、を硝子体内に注入しながら正確なERGを記録した。実際の硝子体濃度をモニターしながら、毒性のない至適濃度の確認を行った。
さらに、APBとPDAの硝子体濃度を様々に変えながらERGを記録することにも成功した。これにより、ある適当な濃度の組み合わせ状態で不全型CSNB患者の特徴的な波形の、あるいはそれに近い網膜(ERG波形)をサルにおいて作成できることがわかった。これにより、ONとOFFの2経路の不十分な不全状態(不全ブロック)が不全型先天停止夜盲の病態であることが証明された。硝子体内の注入濃度比と波形変化の観察により、不全型先天停止夜盲は相対的にOFFブロックの程度の方がONブロックよりも強いことも判明した。

研究成果

• [文献書誌] Terasaki H, Miyake Y, Niwa T, Ito Y, Suzuki T, Kikuchi M, Kondo M.: "Focal macular electroretinograms before and after removal of choroidal neovascular lesions"Investigative Ophthalmology & Visual Science. 43. 1540-1545 (2002)
• [文献書誌] Kondo M, Sieving PA.: "Post-photoreceptoral activity dominates primate photopic 32-Hz ERG for sine-, square-,and pulsed stimuli"Investigative Ophthalmology & Visual Science. 43. 2500-2507 (2002)
• [文献書誌] Niwa T, Terasaki H, Kondo M, Piao CH, Suzuki T, Miyake Y.: "Function and morphology of macula before and after removal of an idiopathic epiretinal membrane"Investigative Ophthalmology & Visual Science. 44(In press). (2003)
• [文献書誌] Suzuki T, Terasaki H, Niwa T, Mori M, Kondo, M, Miyake Y.: "Optical coherence tomography and focal macular electroretinogram in eyes with epiretinal membrane and macular pseudohole"American Journal of Ophthalmology. 134(In press). (2003)
• [文献書誌] Hotta K, Nakamura M, Kondo M, Ito T, Terasaki H, Miyake Y, Hida T.: "Macular dystrophy in a Japanese family with fundus albipunctatus"American Journal of Ophthalmology. 134(In press). (2003)
• [文献書誌] Kondo M, Ito Y, Ueno S, Piao CH, Terasaki H, Miyake Y.: "Foveal thickness in occult macutar dystrophy"American Journal of Ophthalmology. 134(In press). (2003)