研究課題
錐体cGMP依存性カチオンチャネルはα鎖とβ鎖とから成るヘテロ4量体であり、いずれかの先天的異常により色覚欠損(杆体一色型色覚)を生ずる。初年度の研究では両鎖の正常cDNAを単離し、これらを培養細胞で単独発現あるいは共発現させパッチクランプ法で膜電流を測定した。α単独発現細胞では電流が得られたがβ単独発現細胞では電流が得られなかった。α/βを共発現させた細胞ではα単独の場合と比べ、cGMP感受性が低下し、細胞外Caイオンによる内向き電流阻害も軽減されていた。これらのことから、α単独でもチャネルは形成されるが、βが加わると生理的な条件下で働き得るチャネルとなることが示唆された。次年度は杆体一色型色覚において見出されているミスセンス変異(αは39種類、βは2種類)を導入したα鎖およびβ鎖について膜電流を測定した。αの変異では、膜電流が記録できなかったものが32種で、記録できたのが7種であった。記録できたものについてさらに詳しく解析したところ、cGMPに対する感受性が高くなっているものや逆に低くなっているものがあることが判明した。前者では、光子受容時にcGMP濃度が低下してもチャネルが閉じず、また後者ではcGMPの増減にかかわらず常にチャネルが閉じでいるため、錐体機能が損なわれているものと推定された。一方、βの変異に関しては、いずれの変異においても、正常α/βチャネルで見られたようなcGMP感受性の低下が認められず、また、細胞外カルシウムによる内向き電流阻害の軽減も認められなかった。今年度は、その後新たに見出されたミスセンス変異(αで6種、βで8種)を導入したα鎖およびβ鎖について膜電流の測定を行った。今のところαの変異で電流の記録できるものはなく、またβの変異は常にαとの共発現が必要なため未解析である。
すべて 2004
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