研究概要 |
緑内障や糖尿病網膜症を始めとする眼虚血疾患は失明原因として主要な割合を占める網膜・視神経変性疾患であり、現在のところ有効な治療法がなく、その病態解明・治療法の確立は非常に重要な問題である。 本研究では眼虚血疾患における血管内皮機能を制御する分子機構を解明し、これを制御することにより、全く新しい眼虚血疾患の治療法の開発を目指している。虚血、炎症、糖尿病などが対象となる病態である。 近年我々は網膜虚血再灌流後や糖尿病網膜症の網膜微小循環における白血球動態を報告し、国内外で注目されている。血管内皮における白血球のrolling、adhesion、それに引き続く白血球のrolling、adhesion、それに引き続く眼組織への細胞浸潤という病態は緑内障及び眼虚血疾患など様々な眼疾患における臓器障害・神経障害において中心となる病態である。本年度、白血球の移行に関連する新しい分子を探索し、新しい接着分子であることが解明されているLOX-1をふくむ、これら新しい分子の機能を阻害することによる影響を検討した。マウスの眼炎症モデルであるEIUにおいて、LOX-1阻害抗体の接着分子阻害としての効果、炎症抑制の効果を明らかにした(Honjo et al.,2003)。また、新しい作用機序として、血管内皮機能の制御があきらかにされてきたHMG CoA Reductase inhibitorであるスタチンの治療効果を検討し、その神経保護効果を明らかにした(Honjo et al.,2002)。本研究は新しい眼疾患治療概念の発展につながると考える。
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