ラット胎児由来の大脳皮質神経細胞を単離後、Nunc社のメッシュ付き培養皿(35mmφ)に初代培養し、NO donorであるNOC-5(Dojindo)に5、10、30、60、100μMの濃度で培養液に添加して細胞死を誘導した。同時に市販の抗緑内障薬、脳代謝改善薬を培養液に添加し、24時間後にtrypan blueで死滅細胞を染色後、薬剤添加後のtrypan blue negativeの生存細胞をメッシュを利用して数え、添加前の神経細胞数に対しての生存率を算出した。その結果、NOC-5のみの添加の対象に比べて、実験に用いた3種の市販の抗緑内障薬、脳代謝改善薬で、中枢神経細胞に直接作用して、細胞死を抑制する活性を持つものはなかった。その結果は、NOC-5をグルタミン酸に変更しても同じであった。次年度も、他の緑内障薬を始め、脳血管障害の改善薬、抗パーキンソン薬等に、対象を広げること、及び細胞死の誘導方法を変更して探索を続ける予定である。 次にカタラーゼ欠損マウス(acatalasemia)の胎児由来の大脳皮質神経細胞を同様に初代培養した。NOC-5を5、10、30、60、100μMの濃度で添加したところ、30及び60μMの濃度でカタラーゼ欠損マウス由来の大脳皮質神経細胞の生存率がコントロール・マウス由来の細胞に比較して有意に低かった。神経細胞内の活性酸素関連分子のうち、カタラーゼを始めとしたscavenger enzymeの役割については不明な点が多い。本研究で、神経細胞内在性のカタラーゼが、radicalによって引き起こされる神経細胞死からの防御に働くことが明らかになったことで、細胞死防御に有効な新しい薬剤の探索戦略に大きな情報をもたらす事になった。
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