研究概要 |
本年度は,角膜実質細胞によるケモカインおよび接着分子の発現に対するサイトカインの影響をタンパク質レベルおよびmRNAレベルでの比較検討を行った。 1)培養ヒト角膜実質細胞にTNF-αやIL-1などのproinflammatory cytokineを添加して培養すると,タンパク質およびmRNAレベルでeotaxinの産生が亢進した。IFN-γはそれ単独では角膜実質細胞によるeotaxinの産生に何ら影響を与えなかったが,proinflammatory cytokineによって促進されたeotaxinの産生を濃度依存的に抑制した。また,IFN-γはTNF-αとIL-4あるいはIL-13の同時刺激によるeotaxinの相乗的な促進効果もタンパク質およびmRNAレベルで抑制した。 2)培養ヒト角膜実質細胞に種々のサイトカインを添加して培養し,細胞表面に発現したICAM-1およびVCAM-1をin situ cell ELISAで比較検討した。角膜実質細胞はサイトカインを加えない条件下においても恒常的にICAM-1を発現していた。TNF-αの添加により,角膜実質細胞のICAM-1の発現は促進された。また角膜実質細胞が発現したICAM-1が機能しているか知る目的で,角膜実質細胞をTNF-αを添加して培養した後,ヒト末梢血より分離した好中球を共培養し,一定時間後に角膜実質細胞に接着した好中球数を測定したところ,TNF-αを添加した細胞群では対照群に比して有意に接着した好中球数が多かった。さらに,VCAM-1については,角膜実質細胞は恒常的には発現していなかったが,TNF-αやIL-4,IL-13によってその発現が促進した。さらにTNF-αにIL-4あるいはIL-13を同時に添加して培養すると,VCAM-1の発現は相乗的に促進された。
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