研究概要 |
網膜神経幹細胞移植に先駆けて、NMDA障害モデルラット眼にEGFPトランスジェニックマウス胎児脳由来神経幹細胞を移植し、移植細胞が1ヶ月以上の長期に渡り、網膜内に生着することを証明した。第二に、単離した神経幹細胞が、網膜内に移植された場合の、細胞系譜について解析をおこなった。移植された細胞の系譜を特異的マーカーを用いて経時的に解析したところ、移植細胞は移植後早期には網膜内にニューロンとして生存しうるが、時間経過とともにグリア細胞が増加することが明らかとなった。また移植された網膜のミューラーグリアは長期にGFAP、nestin陽性のreactive gliaの反応を示し、移植部位のみならず網膜全体にこれらの変化が認められたことから、ごく少数の細胞を移植することでも網膜内の環境変化が生じうることが示唆された。第三に、移植細胞にbHLHプロニューラル遺伝子であるneurogenin1,2をアデノウィルスベクターを用いて遺伝子導入しその細胞系譜を優位にニューロンに分化誘導しうることを明らかにした。神経栄養因子やサイトカイン共存下での細胞系譜の解析を行ない、ex vivoにおける移植細胞の増殖、分化に関する新たな知見を得た。第四に、自家網膜幹細胞の確立に向けてその候補である、色素上皮細胞、ミューラーグリアの単離およびサイトカイン、増殖因子の増殖、分化に関する効果をin vivo、in vitroで解析した。この結果、in vitroにおいてニューロンに優位に分化させることに成功したが、移植実験において遺伝子導入した細胞でも移植網膜内ではグリアに分化することが示された。移植環境において宿主網膜はミューラーグリアが刺激によりGFAP陽性のreactive gliaに変化する現象が示されており、このことから移植環境を整備することが網膜移植再生に重要であることが明らかになった。これに関わるEph分子群および転写因子の解析を行ない、現在進行中である。 さらに、脳由来神経幹細胞に加え、網膜幹細胞についての検証を行ない、wnt3aに着目しその増殖因子としての効果を解析した。これらの細胞を用いた移植実験においてすでに単離しているEph分子を用いて、神経再生に関する評価を行なう予定である。
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