平成14年度の研究により、自然発症糖尿病モデル動物であるOLETFラット網膜血管内皮において接着分子が増加していることが明らかとなった。平成15年度は、インスリン依存性糖尿病(IDDM)のモデルとして、アロキサンによる実験的糖尿病ラットを用いて、網膜における接着分子について検討した。生後8週齢のSDラットにアロキサン30mg/kgを静脈注射で投与し、糖尿病ラットを作製した。生後72週に、4%パラホルムアルデヒドおよび0.1MPBS混合液で灌流固定を施行した後、眼球を摘出し、パラフィン包埋し厚さ4μmの連続切片を作製した。コントロールとして、同週齢のSDラットを用い、同様にパラフィン包埋、連続切片を作製した。 抗P-セレクチン抗体(ARP2-4)およびIntercellular adhesion molecules-1(ICAM-1)抗体(IA29)を用いて、_SABC(Streptoavidin Biotin Complex)法により免疫染色を行い、光学顕微鏡で観察した。アロキサンによる実験的糖尿病ラット網膜の血管内皮で、P-セレクチン、ICAM-1とも強く染色されたが、コントロールラット網膜の血管内皮ではICAM-1はわずかに、P-セレクチンはほとんど染色性を認めなかった。以上のことから、自然発症糖尿病ラット網膜と同様に、実験的糖尿病ラット網膜においてもP-セレクチン、ICAM-1が増加しており、糖尿病網膜症発症と接着分子P-selectin、ICAM-1の関連性が強く示唆された。
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