昨年度は線維化モデルとして造血幹細胞移植後の慢性移植片対宿主病(cGVHD)における涙腺病変の病理組織学的検討を行い、cGVHD涙腺ではその導管周囲に線維化を認めること、線維芽細胞とT細胞の相互作用がその線維化病変形成に重要な役割を果たすこと、病変部の線維芽細胞はCD4陽性T細胞上に受容体が存在するHLA-DR、CD40、CD54を高発現することを見出した。そこで本年度は線維芽細胞が発現するCD40と活性化T細胞が一過性に発現するCD154の結合により導入されるシグナルに着目し、その線維芽細胞に及ぼす作用を追及した。ヒトB細胞株から分離したCD40の全長遺伝子を組み込んだアデノウイルスベクター(CD40-AdV)を作成してcGVHD患者から得た培養結膜線維芽細胞、正常者から得た培養皮膚線維芽細胞に感染させ、可溶性CD40リガンド、CD40刺激抗体を用いて刺激した後の増殖能および細胞外マトリックス、サイトカイン、増殖因子受容体などの発現を検討した。CD40刺激はCD40-AdV感染線維芽細胞の細胞増殖に明らかな影響を与えなかったが、III型コラーゲンおよび血小板由来成長因子レセプターα(PDGFRα)のmRNAレベルでの発現を増強させた。線維芽細胞はCD40を発現し、活性化CD4陽性T細胞からの刺激が導入されればCD40-CD154の相互作用単独でも細胞外マトリックス産生が増強されることが明らかとなった。また、CD40刺激がPDGFRα発現を増強させることから、線維芽細胞のPDGFに対する感受性を増強する可能性も考えられた。
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