(緒言)角膜内皮ジストロフィはFECD(Fuchs'endothelial corneal dystrophy)、PPMD(posterior polymorphous dystrophy)、CHED(congenital hereditary endothelial dystrophy)の3つに分けられ、それぞれ遺伝的多様性を持っ疾患と考えられている。2001年、FECDとPPMDの一部がVIII型コラーゲンα2鎖(COL8A2)遺伝子の変異と関連する事が報告された。 (目的)VIII型コラーゲンはα1鎖2本とα2鎖1本の三重螺旋構造を持っていることから、α1鎖の遺伝子(COL8A1)も角膜内皮ジストロフィの候補遺伝子の一つと考え、ヘテロデューブレックス法を用いたWAVE【encircled R】システムの試用も含めて検討する。 (対象、方法)平成10年から平成14年までの期間に当科外来に受診し、説明と同意のもと抹消血DNA採血を行った、角膜内皮ジストロフィ患者14名(FECD 10名(女性10名)、PPMD 4名(男性1名、女性3名))を対象とした。各患者DNAのCOL8A1塩基配列をPCR(polymerase chain reaction)法で増幅。WAVE【encircled R】システムにて変異を検出。オートシークエンサーにより塩基配列を確認した。 (結果)患者1名にCOL8A1エクソン1のPCR産物が、WAVE【encircled R】システムで陽性であった。塩基配列ではCOL8A1の287番目の塩基がC→Tに変わり、ミスセンス変異(Ala96Val)をヘテロに持つことが確認できた。 (考察)この患者はPPMDでCOL8A1の変異が認められたが、この変異が疾患と関連があるか否かを検討するために患者の家族、更には正常者も解析する必要がある。また他の患者においてはエクソン2の変異の検索も必要である。今回の試用でWAVE【encircled R】システムにより、迅速に変異を解析できることが明らかになったので、今後、他疾患のスクリーニングにも利用できるよう解析条件について検討していきたい。
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