研究概要 |
近年組織工学分野においては、生体外で組織を構築して欠損部に移植するといった再生医学の試みが盛んである。 そこで、本研究では、マウスES細胞と骨髄間質細胞株TBRシリーズ(東北大学医学部,加齢医学研究所分子発生学教室提供による)との共培養によってES細胞の分化を効率的に誘導する試みを行った。昨年までの研究では神経細胞、筋細胞などへの分化誘導を行ったが、免疫染色等を用いた定性的検討、及び分化率を計測した結果では自発的な分化群との明らかな差は確認されなかった。 本年度は引き続き他のTBRシリーズとの共培養を行い、破骨細胞、メラニン色素細胞などへの分化を試みた。培地を変更することによりこれらの細胞への分化を確認はしたものの、共培養による分化率の向上に有意差はなかった。 結果として今回の研究で用いた骨髄問質細胞株TBRシリーズとマウスES細胞EB5との共培養ではES細胞の分化は誘導されないという結論に達した。 並行して予定していた実験として、一応今回ES細胞から分化誘導された神経細胞を鶏胚脊髄内に移植して、その環境における神経線維の生長を観察することによって分化細胞の性質を確認する事を行っていた。しかし、この実験では神経細胞を移植する手技が予想以上に難しく、胚の生存率が著しく低くなってしまい、また生存した胚でも神経細胞の生着部位が予定した部位と異なっている場合が殆どであり、正確な比較観察が困難であった。
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