正常の創傷治癒過程における瘢痕形成には、肉芽組織の線維芽細胞や血管内皮細胞にアポトーシスが発現し、肉芽組織の縮小化がおこり、扁平瘢痕が形成されることが動物実験から明らかとなっている。これに対して、肥厚性瘢痕やケロイドでは、アポトーシス抑制による細胞死減少で二次的に線維芽細胞の増生がおこり、隆起性の瘢痕が形成されるという仮説が考えられている。そこで、ケロイド・肥厚性瘢痕組織におけるアポトーシス発現とその機能を解明するため、ケロイド・肥厚性瘢痕組織におけるアポトーシス発現とをTUNEL法で解析し、さらにケロイド培養線維芽細胞を用いin vitroで解析した。 TUNEL法によるアポトーシス発現性は、培養ケロイド線維芽細胞において、正常扁平瘢痕、軟性線維腫と比較し、有意な発現増加を示した。また、培養線維芽細胞では、培養正常瘢痕線維芽細胞に比して培養ケロイド線維芽細胞では、血清除去5時間で3倍のカスパーゼ3活性増加を認めた。また、Hoechst33258染色によるアポトーシス細胞は、血清除去24時間で培養正常瘢痕線維芽細胞に比して培養ケロイド線維芽細胞で有意な増加を認めた。さらに、この増加はカスパーゼ3阻害剤(DEVD-FMK)で有意に阻害された。 in vivoでは、正常瘢痕に比してケロイドでアポトーシスの有意な発現増加が確認された。また、in vitroでは、ケロイド線維芽細胞にカスパーゼ3活性誘導能の増加がみられた。以上結果より、一部のケロイド線維芽細胞における、カスパーゼ3を介したアポトーシス誘導能の亢進が示唆された。
|