ケロイドにおいてアポトーシス発現の意義を明らかにするため、アポトーシス実行分子である活性化カスパーゼの発現性を解析した。扁平瘢痕と比較しケロイドでは活性化カスパーゼ3と9の陽性線維芽細胞やTUNEL陽性アポトーシス細胞の有意な増加を示した。したがって、ケロイド線維芽細胞の一部では活性化カスパーゼ3と9を介したアポトーシス誘導が示唆された。さらに血清除去による培養ケロイド線維芽細胞(KF)のアポトーシス誘導実験では、血清除去3時間のKFでカスパーゼ9と3の誘導活性とHoechst陽性細胞アポトーシス細胞の有意な増加を認めた。この増加はカスパーゼ9阻害剤(LEHD-CHO)で有意に阻害され、カスパーゼ8阻害剤(IETD-CHO)で阻害されなかった。したがって、血清除去KFアポトーシス誘導機構に活性化したカスパーゼ9とその下位のカスパーゼ3の関与が明らかとなった。これより過剰に増殖したケロイド線維芽細胞の除去に活性化カスパーゼ3と9を介した細胞死誘導の関与が示唆された。 また、ケロイドの生じる部位による差について比較検討を行った。耳垂ケロイドの細胞増殖動態を明らかにするため、他部位ケロイドとの比較検討から増殖期マーカーとアポトーシス発現性の解析を行った。アポトーシス発現の判定はTUNEL法と、Single-strandedDNAの免疫染色を用いた。細胞増殖能の判定には、PCNA(proliferating Cell Nuclear Antigen)と、Ki-67抗体についての免疫組織染色を行い、それぞれの陽性細胞数を計測し比較検討を行った。ケロイドでは、Ki-67、PCNA共に陽性細胞の発現性は高く、特に耳垂ケロイドで有意なKi-67の発現性の増加を認めた。他部位ケロイドにおける細胞増殖能の低下は術前の保存的治療効果の関与も考えられるが、耳垂ケロイドと他部位に発生するケロイドとは、その性状が分子レベルやその他で異なるとの見解も従来報告されており、詳細な解明には今後更なる検討を要すと思われた。 アポトーシスに関しては、TUNEL法、ssDNA共に陽性率は低く、耳垂以外のケロイドにて増加傾向を示すものの、耳垂と他部位ケロイドにおける有意差は認めなかった。
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