研究概要 |
口腔の生態系の健康状態を保持し、口腔の病態をモニターするために、歯垢中の細菌を迅速・的確に検出・同定することが重要である。本研究では、口腔の病巣に多い嫌気性菌について、PCR法ならびにPCR-RFLP法を用いて、迅速に同定する方法の開発を行った。 1、歯周炎罹患部位(15名)の歯周ポケット内容液を採取し試料とした。試料からgenomic DNAを抽出し、細菌の16S rRNA genesのuniversal primersを用いてPCR増幅を行った。次いで歯周病関連とされる12菌種の菌種特異的primersを用いてnested PCRを行った。15例のポケットからは、P. gingivalisがnested PCRで12例に、通常のPCRで9例に検出され、他の11種類の細菌全てにおいて、nested PCRの方が通常のPCR法よりも検出率が高かった。 2、歯肉縁上歯垢(18名)およびS. mutansの標準株の嫌気培養菌体を試料とした。DNAを抽出後、PCR法によるS. mutansおよびS.sobrinusの検出・同定を行った。18例の歯垢から、nested PCRでS. mutans全例に、S. sobrinusは4例に検出されたのに対し、通常のPCRでは、S. mutansは8例に、S.sobrinusは2例にのみ検出された。また、S. mutans菌体DNAを用いて、PCRの検出感度を検討したところ、nested PCRの方が通常のPCR法よりも約1000倍高かった。PCR primersのspecificityについては,PCR-RFLP法(EcoRI)で確認できた。すなわち、得られたRFLPパターンは、GenBankデータベースから得た16S ribosomal RNA遺伝子配列を基に計算・予測したものと一致した。
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