研究概要 |
本研究の目的は細胞間結合装置構成タンパク質による唾液分泌制御機構を解明することである。平成14年度にはgap junction構成タンパク質のひとつであるconnexin遺伝子に対する影響を検索した。具体的にはColorado大学歯学部,Dr. Quissellより供与された耳下腺腺房細胞由来細胞(PC5,PC10)ならびに顎下腺腺房細胞由来細胞(SMG-C6)の3種類を用いた。最初に3種類の細胞に対して、RT-PCR法を行い、どの細胞がどのタイプのconnexinが発現しているのかをスクリーニングした。その結果、耳下腺腺房細胞由来であるPC10細胞がconnexin32を発現していることが明かとなった。この結果は報告者が以前に発表したラット耳下腺腺房細胞での発現パターンと同じであり(Acta Histochem Cytochem 31:211-216,1998)、この細胞が実験モデルになりうることが示唆された。次にPC10細胞を用いてconnexin32に対するantisenseをlipofection法により遺伝子導入した。その結果、Western blot法にて発現が70〓90%減少することが確認され、このantisenseが使用できることが明かとなった。その次にantisenseにて発現を消失させた後に1)細胞形態の変化、2)細胞増殖の変化、3)分泌能の変化について検索した。その結果、1)の細胞形態に関してはantisense導入後も大きな変化はないものの、2)の細胞増殖に関しては、antisense導入後、細胞増殖が遅延する傾向が認められた。また3)の分泌能の検索は現在、進行中である。以上の結果は平成14年10月19日に行われた第274回東京歯科大学学会総会(千葉)において発表した。平成15年度には分泌能の変化や細胞間コミュニケーション能の変化、さらにはtight junctionの変化に関して検索する予定である。
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