本研究は口腔細菌の実験的バイオフィルモデルを構築することを第一の目的としているので、まず単一菌について細胞培養用のwellを使用して、使用菌株等の選択を行った。歯周病原性細菌については単一菌でバイオフィルムを形成させるのは一部の細菌以外困難であったので、今後も実験的バイオフィルムを形成する環境を検索していきたい。Fusobacterium nucleatumは細胞培養用plateにバイオフィルムを形成させることができなかったので、共凝集を利用して初期付着の環境を構築してゆきたい。 バイオフィルム形成の尿路感染症や消化器疾患の原因菌をはじめとする細菌付着を抑制する働きがあるといわれているクランベリーを用いた実験はう蝕原性Mutans streptococciを中心としてStreptococcus mutans MT8148R、JC2、Ingbritt、S.sobrinus 6715、B13、S.sanguinis ATCC 10556の口腔レンサ球菌を用いて、クランベリーが供試菌体の疎水性と増殖に与える影響を調べた。菌体の疎水性は、クランベリーによって濃度依存的30〓100%減少した。増殖速度は、10mg/mlのクランベリー濃度のときコントロールと比べて遅くなった。クランベリージュース中の成分が菌体表層に付着し、菌体の疎水性を下げることにより付着を抑制している可能性が示唆されたが、疎水性の減少と付着抑制とが相関する結果は得られなかった。今後、biofilm形成因子についてクランベリーの与える影響を検討していく予定である。
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