骨芽細胞は増殖、分化を経て骨形成を行う。この過程における転写因子NF-κBの関与について明らかにすることを目的として本研究を行った。 骨芽細胞におけるNF-κBの活性は細胞の成熟とともに減少した。骨芽細胞核蛋白質中のDNA-NF-κB複合体の構成成分としてはNF-κBサブユニットのうちp50、p65、c-Re1、Re1BであったがNF-κBの活性と同様に細胞増殖とともに蛋白発現が減少するのはp50のみであった。 一方、細胞成熟に伴った骨芽細胞のサイトカイン産出量の変動を検討した結果、インターロイキン6(IL-6)の産生が経時的に増加することが明らかになった。そこでp50発現量の減少とNF-κB活性の低下がIL-6産生を促進しているのではないかと推測し、骨芽細胞にp50アンチセンスオリゴヌクレオチドを導入してIL-6 mRNA発現の変化を検討した。その結果、p50アンチセンスオリゴヌクレオチド導入によりIL-6 mRNA発現が抑制された。IL-6を骨芽細胞に作用させるとアルカリ性ホスファターゼ(ALP)活性が上昇するという報告がある。この報告と今回の結果を総合すると骨芽細胞の成熟に伴いp50の発現が低下し、NF-κB活性が低下してIL-6産生が促進されALP活性が上昇することにより石灰化が生ずることが推測される。 NF-κBはIL-6のみではなく種々の遺伝子の転写の制御を行っていることから他にも石灰化に関与する遺伝子の発現に関与している可能性がある。この点に関して現在も研究続行中である。
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