研究概要 |
本研究では、癌細胞におけるカドヘリン-11(Cad-11)の発現と骨転移との関連を解明することを目的として、本年度は主として以下の検討を行った。 1.Cad-11過剰発現細胞株の樹立 Cad-11を遺伝子導入することにより、Cad-11を過剰発現する細胞株293T/Cad-11を樹立した。293T/Cad-11細胞は親株細胞(293T/Pa)と比較して、増殖には差を認めなかったものの、細胞間接着が亢進していることがdissociation assayにより確認された。 2. 293T/Cad-11の浸潤能の検討 293T/Cad-11の浸潤能についてトランスウェルを用い評価したところ、293T/Cad-11を撒いたupper chamberを、Cad-11を発現する骨芽細胞系細胞(MC3T3-E1,及びST2)を撒いたlower chamber上に直接置いた場合にのみ、293T/Paと比較して有意な細胞浸潤の亢進が認められた。この結果から、293T/Cad-11と骨芽細胞系細胞とのCad-11を介した接着が細胞浸潤を亢進した可能性が示唆された。 3.破骨細胞形成に対する関与 293T/Cad-11と骨芽細胞系細胞とのCad-11を介した細胞接着が破骨細胞形成に関与するか否かについてマウス骨髄培養系を用い検討した。その結果、両細胞の共培養から得られた培養上清を添加した場合においてのみ、破骨細胞形成の有意な促進を認めた。また、293T/Cad-11と骨芽細胞系細胞の共培養により、破骨細胞形成促進因子の一つであるPTHrP産生が亢進していることが示された。以上の結果から、Cad-11を介した細胞接着が破骨細胞形成促進因子の産生亢進を介して、骨吸収の促進に関与する可能性が示唆された。 次年度は、今回得られた所見について、骨転移動物実験モデルを用い、in vivoで検証していく予定である。
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