オステオポンチン(OPN)は骨マトリックスタンパクとして骨改造現象に、また、腎炎の発症や腎結石の形成にも関与している。我々はマウス唾液腺にOPNが発現していることをRT-PCR法およびウエスタンブロット法で明らかにしてきた。本研究では唾液腺におけるOPNの生理的機能の解析を目的として、自己免疫疾患モデルマウスの唾液腺を用いてOPN mRNAおよびタンパク質の発現解析を行った。 自己免疫疾患モデルマウスとして、細胞死受容体Fas遺伝子に変異をもつMRL/lpr、C3H/lprとそのリガンドFasL遺伝子に変異をもつMRL/gld、C3H/gldを用いた。対照として用いたC3Hでは加齢に伴ってOPN mRNAの発現量が上昇した。疾患モデルマウスでは加齢に伴い全身のリンパ節の腫脹が認められたが、唾液腺においてはリンパ球の集簇などの炎症反応は認められなかった。疫疾患モデルマウスの舌下腺と顎下腺では加齢に伴うOPN mRNAの発現上昇が抑制された。また、疾患モデルマウスの顎下腺ではMMP-7によってプロセッシングを受けたと考えられる30kDaの抗OPN抗体陽性バンドが減少し、正常なOPNの陽性バンドの増加が認められた。以上のことから、唾液腺炎ではOPNの発現増強によるリンパ球やマクロファージの浸潤は誘起されず、OPNの主な作用はMMPの活性の制御である可能性が示唆された。 唾液中へのOPNの分泌は認められなかったが、3dkDa抗OPN抗体陽性バンドが検出された。この顎下腺から分泌される30kDaタンパクが唾石形成に関与していることも考えられ、今後、OPNのプロセッシングに注目したい。
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