我々はマウス唾液腺にオステオポンチン(OPN)が発現していることを見出した。そこで、本研究では唾液腺の組織・機能の構築におけるOPNの役割を明らかにすることを目的とし、自己免疫疾患モデルマウスを用いて、野生型マウスでみられた加齢に伴うOPN mRNAの発現上昇が舌下腺と顎下腺で抑制されたこと、顎下腺ではOPNタンパクの発現量が増加し、プロセッシングを受けたと考えられる30kDaフラグメントが減少したことを明らかにしてきた。本年度はマウス唾液腺OPNの小分子(30kDaフラグメント)生成がMMP作用によるものか、またそのフラグメントの性状を解析するためその単離を試みた。 30kDaフラグメントのOPNタンパクの一部分であるかを明らかにするため、組換えOPNタンパクを基質として、活性型MMP-7あるいは顎下腺ホモジネートと反応させたが、用いた実験条件下では、いずれの場合にも30kDaフラグメントや、その他の抗OPN抗体陽性フラグメントは検出されなかった。また、舌下腺ホモジネートを基質とした場合もまた、限定分解されたOPNタンパクのフラグメントは検出されなかった。おそらくMMPでの切断には組替えOPNタンパクにはない糖鎖の付加やリン酸化が必要であること、また、唾液腺抽出液中にMMPの活性抑制にかかわる分子が存在することが示唆された。 30kDaフラグメンの性状をアミノ酸配列の決定から明らかにするため、プロテインGを用いた免疫沈降法により単離を試みたが精製できなかった。2次元電気泳動法により唾液腺抽出タンパクから30kDaフラグメントをシングルスポットとして分離することができたが、アミノ酸配列の決定には至らなかった。
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