生後3週齢前後のラット正中矢状縫合部を左右頭頂骨とともに摘出し、培養条件下においてメカニカルストレス(伸長力)を一定時間持続的に加えることによる組織の変化を検討した。 培養後の組織から抽出したmRNAに対してRT-PCR法を用いて種々の因子について検索したところ、持続的伸張力によりIGF-IのmRNAが増加し、培養液中に分泌されるIGF-Iタンパクも約2倍に増加することがわかった。そこで、IGF-IのmRNAがラット正中矢状縫合部のどこで産生されるかをin situ hybridization法を用いて検討したところ、同部位の骨芽細胞様細胞または線維芽細胞に局在していた。一方、持続的伸張力によりこれらの細胞において細胞増殖活性の増加が免疫染色により認められたため、次にこのIGF-Iの増加が細胞増殖活性に直接働いているかどうか、またそのシグナル伝達機構はいかなるものであるかをin vitroで検討中である。 また、IGF-I遺伝子をベクターとともにCHO細胞にトランスフェクションし、この細胞をヌードマウスの頭頂骨に移植することでIGF-Iタンパクを局所的に過剰発現させ、IGF-Iのin vivoにおける機能を解析した。 ヌードマウスに移植したCHO細胞は単独でも増殖したが、IGF-IをトランスフェクションしたCHO細胞は細胞増殖が加速されることにより腫瘍のサイズが大きくなるとともに、皮質骨に骨添加像も認められた。 以上の本年度の研究により、IGF-Iはメカニカルストレス(持続的伸張力)により縫合部組織より分泌され、オートクリン・パラクリンにより細胞増殖活性を増加させるとともに、骨組織においては骨添加を引き起こす可能性を示唆している。
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