ラット頭蓋骨の正中矢状縫合部に伸張力を加えることにより、縫合部に存在する骨芽細胞様細胞において、IGF-IのmRNA発現とタンパク産生が増加し、IGF-I受容体のmRNA発現も増加することを確認した。さらに、メカニカルストレスにより産生されるIGF-Iのオートクリン、またはパラクリン作用が、骨芽細胞様細胞の増殖活性に影響を与えることをin vitroにて示唆した。そこで、IGF-Iの骨代謝に与える影響をin vivoにて検討するため、IGF-I遺伝子を形質導入したCHO細胞をヌードマウスの頭頂骨骨膜上に移植し、IGF-I遺伝子の発現増加が頭頂骨表面に添加性の類骨を増加させるとともに、その周囲に存在する骨芽細胞はアルカリフォスファターゼ陽性反応が増加することより、IGF-Iによる石灰化促進の影響も示唆した。 一方、ヒト骨芽細胞はメカニカルストレスにより、ATPを放出することが報告されているが、ヒト骨芽細胞にATP受容体が存在し、ATP刺激により破骨細胞形成の促進因子の1つとされているIL-6産生が増加することを見いだした。また、骨芽細胞に対する交感神経の関与も報告されており、マウス骨髄培養細胞において、βアドレナリン刺激による破骨細胞形成促進作用が、知覚神経に含まれるCGRPにより抑制されることを見いだした。これらの知見より、メカニカルストレスに対し骨芽細胞は鋭敏に反応するとともに、骨芽細胞におけるメカノセンサーの存在を示唆した。 現在、メカノセンサーの候補として考えられている数種のイオンチャネルが、ヒト骨芽細胞に多量に存在することを見いだしており、チャネルの機能発現について電気生理学的手法を用いて検討中である。
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