研究概要 |
炎症性骨破壊を伴った疾病,特に慢性関節リウマチに対する治療は主に抗炎症薬や免疫抑制薬などを用いた薬物療法や理学療法が主体である.これらの方法では骨破壊を抑制できないため骨破壊を抑制する治療法の開発が求められている.本研究では近年動物組織の任意の部位の細胞内に遺伝子や薬剤を効率的に導入することのできるエレクトロポレーターという装置を用いて,関節炎を発症している局所に炎症を抑制したり,破骨細胞の形成を抑制するサイトカインの遺伝子を投与することによって関節炎の治療や骨破壊の抑制が可能かどうかを検討したい.そこで本年度は,発現ベクターの構築,in vitroやin vivoでの遺伝子発現の検討を行ない,以下のことが明らかとなった. (1)炎症を抑制するサイトカインとしてインターロイキン1受容体アンタゴニスト(IL-1ra)を,破骨細胞の形成を抑制するサイトカインとしてオステオプロテグリン(OPG)に着目し,これら遺伝子の発現ベクターを構築した. (2)293T細胞に上記遺伝子をリン酸カルシウム法やエレクトロポレーターを用いて遺伝子導入を行い,発現するかをWestern blot法とフローサイトメーターを用いて解析した. (3)エレクトロポレーターを用いてin vivoでの遺伝子導入の条件を検討した.まず,電極を工夫し,安定に通電する条件を得た.また,動物の局所(筋肉,皮膚,関節など)に遺伝子導入を試み,発現することを確認した.
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