我々は、口腔癌の発生メカニズムの解明及び放射線治療感受性の評価の確立を目的に、ヒト口腔癌細胞のアポトーシス機構について検討を行ってきた。そして、昨年度迄に様々なstimulator誘発のアポトーシス細胞で、鍍銀染色に陽性反応を示す核小体形成帯が消失すること及び110kDa核内蛋白が消失し、80kDaの蛋白が出現することを報告していた(Morimoto Y. et al. 2001)。同時に、この110kDaの蛋白分解を誘導する物質の同定を行うために、cell-free systemを作製し、解析した。結果として、110kDaの蛋白は脱リン酸化酵素の一つであるPP1γと作用しDNA fragmentationを誘導するエンドヌクレアーゼ活性に関係する可能性が確認していた。その後の実験により平成14年度の期間中に、in vitroの実験系において、110kDaのエンドヌクレアーゼと関連を示す蛋白が細胞内核小体に存在するニュークレオリン(Kito S. et al. in press)であることを発見した。更に、ニュークレオリンがアポトーシス細胞ではエンドヌクレアーゼの作用と平行して分解され80kDaに変化することも発見した。加えてアポトーシスの間にニュークレオリンが核小体における局在性を失い細胞質内にdiffuseに広がることも発見した。来年度は更にin vivoの実験系でも同様の現象が生じるか否かについて検討していく予定である。更に、放射線誘発アポトーシスだけではなく同様の機序を持つと考えられる抗癌剤でも同様の変化の惹起について検討している。
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