研究概要 |
SPARCは,osteonectinとしても知られる分子量43000のmatricellular proteinである.これまでにDMBA発癌モデルを用いて,SPARCが扁平上皮癌の発生に於いて重要であることを明らかにしてきた.本研究では,SPARCが癌細胞の転移にどのような働きがあるかについて検討するために,SPARC KOマウスと同系の細胞株であるB16-BL6メラノーマ細胞株SPARCアンチセンス発現ベクター導入安定クローン(本研究課題の平成14年度分の補助を受け作成済み)を用いて検討した.マウスの尾静脈よりSPARCアンチセンス導入細胞とコントロールベクター導入細胞を注射し,3週間後の癌細胞の転移に関して比較してみると,肺へのコロニー形成率の高い順の組み合わせは以下の通りであった.《SPARC control vector細胞をWild typeマウスへ移植》>《SPARC control vector細胞をWild typeマウスへ移植》>《SPARC antisense vector細胞をKOマウスへ移植》>《SPARC antisense vector細胞をKOマウスへ移植》.以上の結果は,SPARC発現は肺転移を促進することを示唆している.一方,骨への転移は,肺の結果と相反した.このことは,臓器特異的転移性の形質決定にSPARCが関与していることを示唆している.実際,SPARC発現が悪性度や予後との比較に於いて,相反する臨床報告が散見されている. 平成14年度における本助成により,マウスメラノーマを用いてSPARCアンチセンス導入安定クローン作成し,SPARC発現を抑制するとUVやシスプラチンに対する感受性を上昇することを明らかにしているが,今年度は,マウス口腔扁平上皮癌細胞株についてもSPARCアンチセンス導入安定クローンを作成し検討した結果,シスプチンに対する感受性が更新していたことを見い出した.5-FUにたいする感受性には顕著な差は得られなかった.このように,SPARCアンチセンスによるシスプチンに対する感受性上昇は,癌の頭頸部癌では,シスプラチンを基本とした化学療法が汎用されていることから,既存の化学療法とSPARCアンチセンスオリゴなどを用いた"間接的"遺伝子治療との併用療法の有用性が考えられた.
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