研究概要 |
現在ひろく臨床応用されている人工歯根(インプラント)は、その保持を骨癒着に求め歯根膜組織を有していないため、様々な機能を満足できない状況にある。そこで、歯根膜由来培養細胞を用いて人工歯根周囲に歯根膜組織を構築することを目指している。本研究では、特に人工的にシャーピー線維を構築する予定であり、本年度は特に歯根膜由来細胞と生体材料との関係ならびに立体培養の可能性について以下の結果を得た。 1.歯根膜組織内へのチタン挿入 歯根膜由来細胞を付着させないチタンを残存歯根膜組織に接して挿入したところ、チタン表面に垂直に走る線維は観察されたがセメント質の形成は見られず、シャーピー線維は構築されていなかった。細胞を付着させたチタンにはシャーピー線維の構築がみられたことから、歯根膜由来細胞の存在が重要であると考えられた。 2.純チタンへの歯根膜由来線維芽細胞の接着と石灰化 純チタン上で歯根膜由来線維芽細胞を培養したところ、培養1,2日後ではポリスチレン上と比較して細胞の付着が少なく伸展も見られなかったが、フィブロネクチンの沈着は多く見られた。培養7日後になると、純チタン上でも細胞が伸展し、両者の間で細胞数ならびにフィブロネクチンの沈着に差は見られなかった。また、β-1インテグリン、FAK、pFAKの分布にも差が見られなかった。また、培養期間を長くすることにより、チタン上においても石灰化結節の形成が見られた。 3.多孔質チタン体上での歯根膜由来線維芽細胞の培養 歯根膜由来細胞を立体培養させる足場として、3種の平均粒径(65,189,374μm)をもつチタン粉末を焼結して内部がポーラスである多孔質チタン体を試作し、その特性ならびに細胞付着について検討した。平均粒径が大きくなると気孔率が増加し、ヤング率が低下した。平均粒径189ならびに374μmのチタン上で細胞培養を行うと、細胞がチタン粉末内部まで付着・伸展している様子が観察されたが、65μmでは付着細胞数が少なかった。 4.多孔質マイクロキャリア上での歯根膜由来線維芽細胞の培養 立体培養系としてコラーゲン製多孔質マイクロキャリアを用いて歯根膜由来細胞を培養した際の細胞の伸展ならびにALPase活性について検討した。SEMならびに共焦点レーザー顕微鏡で観察したところ、細胞の突起がマイクロキャリア内部まで伸展している様子が確認された。ALPaseは培養7日目までは差がみられなかったが、培養2週目になると静置した場合に比較して攪拌することによりALPase活性の上昇が認められた。
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