研究概要 |
現在ひろく臨床応用されている人工歯根(インプラント)は、その保持を骨癒着に求め歯根膜組織を有していないため、様々な機能を満足できない状況にある。そこで、歯根膜由来細胞を用いて人工歯根周囲に歯根膜組織、特に人工シャーピー線維を構築する目的で、本年度は生体材料と歯根膜組織あるいは歯根膜由来線維芽細胞との関係について以下の結果を得た。 1.歯根膜組織内への生体材料の挿入 歯根窩洞を作製し、残存歯根膜組織に接してチタンを挿入したところ、歯根膜由来細胞を付着させない場合はチタン表面に垂直に走る線維は観察されたがセメント質の形成はみられず、シャーピー線維は構築されていなかった。細胞を付着させたチタンにはシャーピー線維の構築がみられたことから、歯根膜由来細胞の存在が重要であると考えられた。コラーゲンスポンジを挿入すると、シャーピー線維の構築が認められた。 2.生体材料への歯根膜由来線維芽細胞の接着と石灰化 純チタン、ポリ乳酸/ポリグリコール酸上で歯根膜由来線維芽細胞を培養したところ、培養初期ではポリスチレン、コラーゲン上と比較して細胞の付着が少なく伸展もみられなかったが、フィブロネクチンの沈着は多く見られた。長期培養することにより、細胞が伸展し、細胞数ならびにフィブロネクチンの沈着に差はみられなくなった。また、いずれの生体材料上においても石灰化結節の形成が認められた。 3.生体材料上での歯根膜由来線維芽細胞の立体培養 3種の平均粒径(65,189,374μm)をもつチタン粉末を焼結して内部がポーラスである多孔質チタン体を試作し、その特性ならびに細胞付着について検討したところ、平均粒径が大きくなると気孔率が増加しヤング率が低下した。平均粒径189ならびに374μmのチタン上で細胞培養を行うと、細胞がチタン粉末内部まで付着・伸展している様子が観察されたが、65μmでは付着細胞数が少なかった。コラーゲン製多孔質マイクロキャリアを用いて歯根膜由来細胞を培養すると、細胞の突起がマイクロキャリア内部まで伸展している様子が確認され、ALPaseは培養2週目になると静置した場合に比較して攪拌することにより上昇した。
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