近年、注目されつつある東洋医学のなかでも、特に効果の高いと言われる鍼療法について、症例を集めるとともに、それらの効果や変化について解析をおこなった。 ツボの選択:今回われわれが注目したのは、実際の臨床で最も汎用され一般的なツボの1つである合谷である。合谷は、体穴として第一選択されることの多いツボであり、全身症状の診断においても重要である特殊なツボである。また、大腸系経絡上にあり、この陽明大腸系経絡の一方は下顎の歯肉に進入し、他方は上層で左右から交差する。すなわち、歯科領域に関連が深く、頭、顔、目、耳、鼻、口腔、歯、喉部の疾患を主治とするツボであり、臨床での応用範囲も広い。 効果判定:また、臨床における効果判定の手段として、体表面温度の変化、脈拍数、心拍数、呼吸数、血圧、心電図などの変化を参考にした。実際に、嘔吐反射の強い患者、顎関節症、顔面神経麻痺の患者に対して、従来の鍼療法をもとに施術し、良好な結果を得た。施術中の患者の脈拍数、血圧は置針後5分以内に、安静時と同じか、やや低い値を示し、リラックスしていることがうかがえた。また、体表面の温度変化においては、置針直後から、同側経絡上の顔面部に温度上昇が認められた。 CO_2レーザーの応用:さらに、われわれは、今後の医療現場で問題になるであろう感染への対応や、ハリ自体に恐怖心を覚える患者を考慮して、CO_2レーザーの応用を試みた。その結果、ハリとほぼ同等の効果が認められた。今後、CO_2レーザーの照射強度、照射時間、患部からの距離などの検討をおこなうことが課題である。 以上のことから、今年度は、発生学の観点から対象となるツボを増やし、さらに多くのデータを収集し、解析をおこない、将来性のあるCO_2レーザーのより効果的な応用方法を検討する予定である。
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